■アメノチハレ■
『お前、名前何て言うの?
何処の学校から来た?家何処?』
『・・・伊武深司。霞澄小から来た。家は教えない。』
『何でだよー!
・・・まいっか、俺は神尾アキラ!
豊魅小から来たんだぜ!
今日からお前の事深司って呼ぶから!!』
『何だよ突然・・・。
あ〜ァ入学早々変な奴と知り合っちゃったなァ・・・。
初対面で突然名前?家?何処卒か?
本当変な奴だなァ・・・裏表なさそうだけど。』
『・・・フフ・・・ぷぷッ・・・
お前面白いのなー!
俺の事もアキラって呼んでいいぜ、宜しくな、深司!』
あの時の目に、惹かれた。
最初は変な奴って、それだけだった。
『・・・神尾アキラ、ね。』
「・・・深司・・・―――」
「やっぱり気持ち悪い?
男に、しかも俺なんかにこんな事言われたら。
・・・でも俺は自分ではおかしいと思ってない。
別に男が好きって訳じゃないし。」
深司の真剣な目に、呑み込まれそうになる。
深司は冗談を言えるような人間じゃないって、
俺がよく知ってるから。
ずっと見てきたから、俺だってずっと・・・―――
「俺は・・・、女じゃね、・・・ぇ・・・―――」
「うん知ってる。
俺は神尾だから好きになったんだから、
そんなの当たり前。」
何なに、何でこんな恥ずかしい事
躊躇いなく言うんだよ、深司!
ちょ、ちょっと待て、落ち着け俺。
・・・深司が、俺の事を・・・?何で。
俺は深司みてぇに綺麗な面してる訳じゃないし、
何せ何で俺?俺の何処が・・・―――
期待しちゃ駄目だったのに、
何でー・・・何でだよ・・・。
「・・・何で、今更・・・―――」
「・・・絶対、振り向かせるから。」
「なっ・・・!!!?―――」
その綺麗な髪を靡かせて、
綺麗な目で俺だけ見て
深司がそう言い切った。
俺は自分の頬が
思いっ切り熱を持った事に気付いた。
だってこいつ、
さらりとすんげぇ恥ずかしい事言ってんだぜ?!
あう〜・・・―――
・・・どうしよう。
俺だって深司の事好きなのに・・・―――
でも、さっき俺、深司に嫌い・・・、って・・・―――
「・・・それじゃあ・・・―――」
「・・・?」
「・・・どうして、目障りって言ったんだよ・・・?」
「え・・・?」
訊く気なかったのに。
訊いたら俺が傷付くって、それだけ考えてた。
だって答えなんて聞きたくない。
絶望する答えだったらって、
自分の思考に引き篭っちまう・・・。
それなのに・・・何で訊いちまったんだ・・・俺。
「何で・・・、俺のCDとか単行本、目障りだって・・・―――」
「あぁー・・・―――」
少し罰の悪そうな顔して、
深司は俺から目を逸らした。
・・・やっぱり、訊かない方が正解だったかもなぁー・・・。
心臓の辺りがきゅって痛くて、
今は早く深司から離れたいって思い始めた。
答えなんて、聞きたくない。
だって、傷付くくらいなら、
望みとかなくなっちまうなら、
・・・マジで深司の事しか考えられなくなる前に・・・
―――嫌われたい。
その方が、後が楽だ・・・―――それなのに。
「・・・ごめん、あれ、言い方悪かった。」
「へ・・・?」
自分の口から間抜けな声が出て、
びっくりしちまった。
「・・・あァー・・・。」
「な、何なんだよ・・・?」
「あれは、ただ口実が欲しいと思っただけ。」
「口実・・・?何の。」
俺が首を傾げて深司を見上げると、
深司は少し白い頬を染めてた。
・・・ちょ、何。どうした深司!?・・・可愛い・・・?
って何考えてんだよ俺ぇええええぇぇえ!!!!
「・・・神尾と、会う為の口実。」
「お、俺と・・・?会う?」
ななななななっ・・・!!!!
「最近この雨でしょ?
だからただでさえ学級違うのに、
部活でも神尾に会えないし。
体育は隣の学級と一緒だから、神尾達の学級とは縁がない。
もう、二週間も顔見てなった。
だから、放課後だけでも会いたいって思った・・・それだけ。
神尾、普通に誘うだけじゃ
会ってくれなさそうだったから・・・。
お前友達多いから。
・・・好きな子に会えないのがつらかっただけ。ごめん。」
―――深司から、
深司の口からこんな事言われるとは思ってなかった。
・・・俺と、会いたかったから口実を作ったって・・・。
じゃあ今までのは、俺の勝手な理解だったのか・・・?
なのに俺・・・俺、深司に嫌いって酷い事言った・・・。
どうしよう・・・―――どうしよっ・・・。
「あの、深・・・、司っ・・・―――」
「早く帰った方がいいよ。
これ以上一緒にいたら、俺神尾に何するか分からない。
あぁ、寒かったら上着貸すし。」
「違うんだよっ・・・!!!!―――」
「えっ・・・―――」
「みゃっ・・・。」
気付いたら、優の傘捨てて、小猫を手放して、
俺は深司に抱き付いてた。
だって、分かんねぇんだもん・・・―――
どうしたら、一体どうしたら、
何言ったらさっきの『嫌い』の言葉を
なかった事にできるか。
きっともう言葉じゃ訂正できないって思った。
でも俺が深司の事を嫌いじゃないって、
好きだって分かってほしいんだよ・・・―――
「・・・神尾・・・、どうした訳・・・―――」
「俺・・・深司の事嫌いじゃねぇよ、ごめんな・・・。」
「・・・別に神尾が謝る事ないんじゃないの?
俺が勝手に好きになって、
神尾の事困らせてるんだから。」
「あぁああもうだから!!
俺も深司の事好きで好きで仕方ねぇんだってっ・・・!
・・・会いたかったんだよ・・・、
ずっと部活もねぇから会えねぇし・・・。
でも今日、廊下で深司に会えてすっげぇ嬉しかった・・・。
・・・でも深司、
自分の家にある俺の私物が目障りだって言ったから・・・
き、嫌われてる、と思って・・・―――おれ・・・。」
打ち明ければ、いいんだ。
全部全部、俺が思ってる事、一言一句もらさないで。
深司に全部言うんだ。
それで分かってもらえなくてもいいから、
分かってもらえなかったらしつこく言ってやる。
頼むから、頼むから信じてくれよ・・・っ!―――
「・・・神尾、・・・。」
「俺、マジでほんとに深司の事好きだからっ・・・
あの・・・今更、だけど・・・
信じてもらえないかもしれないけど・・・―――」
「・・・大丈夫、神尾が俺には嘘吐かないって知ってる。
でもさ・・・―――」
「みゃあお。」
深司が、俺を抱き返してくれた・・・、けど。
「神尾って、自分の事好きな相手の前で
一番危ない事って知ってる?―――」
「何、それ・・・?」
深司が俺にそう訊いた。
俺は何の事か全然分からなくて、
多分間抜け面だったんだろう、顔を上げた。
・・・その、瞬間だった。
口元に触れた温かい感触。
深司の顔が至近距離、物凄く近い。
・・・え?
「・・・無防備。それが一番危ない事。」
「あぇえぇえぅえ!?」
顔が一瞬でぼって熱くなった。
待て待て、今何した?何された?
え、何。何もしかして・・・―――
「神尾の一番は、誰?」
「し、深司・・・だぜ・・・?」
「俺の一番も神尾だけ。
これで契約成立。浮気したら許さないから。」
ちょ、契約って・・・!?
深司はにっこり笑って、
俺の横にいた小猫を抱き上げる。
「みゃあ・・・?」
「家に連れてこ。可愛い。」
「ふぁ・・・?」
あぁ、空が晴れてきた。
空を覆ってた雲が流れてく。
太陽が隙間から見える。
・・・俺の心にも、暖かい光が射し込む。
「じゃ、そういう事で神尾、俺の家に寄ってね。」
「えっ?」
+END+
初伊武神。結構好きなこの2人。笑
何か甘くなり過ぎて神尾のキャラ崩壊してますね。爆
ここまでお付き合い下さった方、
ありがとうございました!
BacK