■革命の蒼穹■




――あの頃、誰かが僕を呼んでいる気がしたんだ。

もう既に誰も居る筈のない焼野原の奥から、
小さく何度も名を呼ばれた。
それはとても細くて冷たい声だった。
感情が無くて、今となっては、
本当に人間の声だったのかも分からないけれど。
あの時、確かに誰かが僕の名を呼んだ。


――『     さん・・・。』――


分からない、何故今になってこの夢を見たのだろうか。
もう十年以上も前の出来事なのに。

忘れかけていた頃に、また復活した記憶。

あの頃はそう深くも気にしなかった。
僕は声がする方向に歩いて行こうとした。
――しかし、一人の少年が僕を止めた。

戦で焼けた紅い空に飛び交う航空機。
その中で、あの声だけが残っていたのだから、
信じられなかった。
僕の他に誰かが居る筈は無いと思っていたのに、
あの時少年が僕の手を引いたのだ。


――『君はまだ、その声に着いて行ってはいけない。』――


はっきりとした声でそう言われた。
振り返れば、丁度あの頃の僕と同じ年頃の少年が
一人立っていたのだ。
少年はただ首を振って、
僕の腕を引き続けていた。
その真剣な目に、
呑み込まれそうにもなるほどだった。


その少年が、
僕の知らない双子の兄だったと知った時は本当に驚いた。




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