■アメノチハレ■
「さいなら〜。」
「バイバイ、また明日ね優衣!」
「うん!」
いつの間にか授業は終わってて、
HRも終わっている。
お互いにバイバイって言って、友達と別れる。
教室から出て行く奴らの顔は無駄に晴れやかなのに
外は相変わらずの悪天候。
俺の頭ン中ももやもやが晴れないし。
こんな気持ち、何もかもあいつのせいだ。
『目障りだから、持って帰って。』
何もあんな言い方しなくたっていいじゃねぇか・・・。
俺一人で悩んでて馬鹿みてぇだ。
どうしよ、約束すっぽかしてやろっかな・・・。
駄目だ、それじゃ余計嫌われる・・・って、
俺かなり女々しい〜・・・。
でも・・・目障りだってマジで思われてるなら
そんなとこに置いときたくない。
もういいや、深司なんかには嫌われちまっても。
「神尾、今日一緒に帰らん?」
「え?」
クラスの友達がそう誘ってくれた。
でも深司との約束が・・・やめた。
何かもういいや。
別に今日取りに行かなきゃなんねぇ訳じゃないしよ。
深司に会ったら明日でもいいかって聞いてみよう。
無理、とは言わないよな・・・。
あいつマイペースだし。
「・・・いいぜ、でも俺傘ねぇんだ、入れてくんね?」
「おう、でもアキラって相変わらず阿呆?」
「何だよそれ?!」
一緒に笑い合う事が出来るから
友達だって言える。
深司は、俺に笑ってくんねぇから。
「だってこんな雨の日に傘忘れるとかどんだけー。」
「うっせぇな、
こんなになるとは予想できなかったんだよ!」
「あっはは、やっぱ面白れぇ〜アキラ!」
幼馴染のこいつは俺と家も近くて、
偶然、否、ここまできたらもう奇跡か?
幼稚園の時からずっと同じクラスなんだよな。
色々相談にも乗ってくれるしいい奴だぜ。
いいよ、最初から俺は深司に嫌われてたっぽかったし。
何かもうこのまま馬鹿みてぇに
片想いしてても無駄なだけ。
・・・もう面倒だ。
〔玄関〕
運ぶ足は深司の学級じゃなくて玄関だ。
嫌われてるのに想い続けてられるほど執念深くないし、
・・・今は、顔を合わせるのが嫌だ。
深司に会いたくない。
「うっわ、雨すっげぇなぁ・・・―――」
「もう嵐だろ、これ。」
雨は、激しさを増す。
雨は、俺の中に打ち込んでくる。
雨は、今止む事を知らない。
〔外〕
((―――ザザザァアアアー・・・―――))
「・・・でさ、その時の鏡世の顔がウケてさァー。」
「マジかよ?ありえんだろ。」
何気ない会話で盛り上がっているせいか、
雨の音が遠く聞こえるようになってきた。
いつもお互いに部活に入ってる訳で、
こうやって一緒に帰るのは
実際のところは久しぶりだ。
幼馴染のこいつも外の運動部で、
いっつも忙しいらしい。
まぁそれは俺も一緒だけどさ。
学校では学級も一緒だって事もあるけど、
何か新鮮なんだ。
あーあ、昔を思い出すなぁ〜。
暫く歩いたところに、一つの影が見えた。
雨で霞んで見えないけれど・・・―――あいつだ。
遠くから見ても分かる。
だって今までずっと見てきたんだぜ・・・?
・・・そういえば、この近くって
あいつの家だよな・・・―――
「・・・アキラ?」
「あっ・・・ぃぁっ・・・―――」
突然声をかけられて驚く。
あ〜マジびびった。寿命縮んだぜ、責任取れ。
まいっか・・・。
「・・・なぁ、遠回りしねぇ・・・?」
言ってみる。
このままいつも通り道を進んだら
あいつとはちあわせだ。
見たくない、今は顔合わせたくねぇよ・・・
―――深司。
「・・・何で?」
「あ・・・その・・・―――
ほら、最近一緒に帰ってなかったじゃねぇか、
だからその・・・もう少し一緒にいても
罰当たんねぇだろっ・・・?」
言い訳思いつかねぇよあぁ〜・・・。
「・・・それはつまり
俺とまだ一緒に歩いていてぇって事?」
「ん?・・・あー・・・そう、なのか・・・な?」
何か含みある言い方だけど・・・まぁ、そうなのか?
分かんねぇけどさ。
「・・・昔からそうだけどよ、可愛い奴だよな〜アキラって。
いーよ、じゃあそこ曲がる?」
「あ、あぁ・・・ごめん。」
可愛い?俺は女じゃねっつの。
「・・・ふーん・・・。」
あいつが、何か呟いた気がした。
ただ、そんな気がしただけだけど。
BacK⇔NexT