■アメノチハレ




空はまだ雲で覆われてる。

雨雲は雨を呼び、雨は雷を呼んで、雷が嵐を呼ぶ。
いつから成り立った法則かなんて知らねぇけど。
でもこれは確実な事で。

天気も人の心も同じなんだ。
人の心もいつも不安定だし、それは天気にも言える。
ちょっとした事で簡単に崩れたりもするし、
絶頂に舞い上がったりもする。
不安定だけど、思考は簡単に壊れちまう。
心に雨が降って、それはいつの間にか嵐になって
取り返しがつかなくなっちまう訳よ。

―――今の俺みたいに。

忘れて、今までの感情全部捨てて
立ち直んなきゃ駄目だろ?
頭ン中じゃ分かり切ってんのに・・・―――

何かもう疲れたし、
これ以上あいつに付き纏っても、
俺があいつの事考えてても、
叶わないのは目に見えてる。
深入りする前に忘れればいい。
そしたらきっと傷付く事もねぇ・・・そう思いたいし。


「なぁアキラ、本当の事言えば?」


「え・・・?」


「お前って昔から分かり易いんだよなァ・・・。
 言っちまえばいいのに。」


「何を・・・?」


無意識の内に俯かせていた顔を上げて
目の前の友達に訊く。
言う・・・って誰に?何を?・・・分からねぇ・・・。


「俺達昔から腐れ縁で仲良いからさ、
 アキラが俺に頼ってくれんのってマジで嬉しいけどな、
 俺に頼ってばっかじゃお前の為になんねぇし、
 お前も自分の事分からなくなるぜ?
 ・・・逃げてちゃ何にもなんねぇし・・・。」


その時は、
こいつが何を俺に言いたいのか分からなくて、
ただ首を傾げてるだけだった。


俺が、何から逃げてる?俺の事って何。


「それってどういう・・・―――」


「・・・お前、伊武の事好きだろ。」


「えあぃあえぇ!?」


え、何で。
何でそんな事言えんのこいつ!?
別に俺は深司が好きとか嫌いとかじゃなくて、
ただ・・・ただ特別なだけ。
嫌われたくねぇって思うだけ・・・。

何がどう特別なのかって言われっと
答えらんねぇけど・・・―――


「アキラお前な〜・・・
 現実とか自分の気持ち少しは理解しろよ、
 俺でも見てるだけで分かんのに。」


「んな事言ったってよォ!!」


無理無理、んな事突然ズバっと言われても困る。

あいや、俺の事なのは確かだけども!
え何、俺ってそんなに分かり易い訳!?
周りから見ても分かっちまう程!?


「・・・んー・・・(あーあ、さっきからキッツイ視線が・・・)。」


「は?」


俺が目を丸くしてると、
それを面白そうにこいつ、見てる。
腹立つ・・・けど、
何か普通の腹立ちじゃねぇんだよなー・・・。
ま、幼馴染だからなんだろうけど。


「・・・俺だってアキラ狙ってたのに、な。」


「は?お前何か武器持ってきてんの?」


「・・・あぁ、まぁそういう事でいいや。」


「何だよそれ?」


俺が訊くと目の前の友達はにっこり笑って、
俺に傘を持たせた。


「俺、今日急がなきゃなんねぇ事思い出しちまって。
 傘はアキラが持ってていいぜ、雨も少し治まった。
 じゃーなっ!また明日!」


「あっちょっ・・・―――」


って引き止める暇ねぇよ、足速過ぎだっつの。
言葉を言う暇なく、
口を開いた時に奴は行っちまった訳で。

何だよ、突然・・・―――

少しの間、その場から足が動かなかった。





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